ノルムの計算方法まとめてみた
ノルムとは
大学の数学の授業になると、見慣れない記号が多く出てきますよね。もそんな記号の一つじゃないでしょうか。良く知ってる絶対値記号に似てるけど縦線多すぎ!、と思った人も多いでしょう。
まずノルムについてざっくり説明をすると、ベクトル空間で「長さ」を与える関数です。
絶対値が実数の「大きさ」を表していた記号なので、「ベクトル空間版絶対値」とイメージしてもそこまで間違ってはないと思います。
それでは以下でノルムについて詳しく見ていきましょう。
ノルムの定義
ノルム(norm)の定義は次のように定められています。
[条件①](斉次性)
任意の実数と次元ベクトルに対して、
[条件②](正値性)
次元ベクトルと零ベクトルに対して、
[条件③](三角不等式)
次元ベクトルに対して、
定義だけ見ても詳しい計算はあまりわかりませんね。それもそのはずで、ノルムにはたくさんの種類があるのです。次にたくさんあるノルムの中でも良く使われるL1ノルム・L2ノルムの二種類をみていきましょう。
もし、添え字の無いのことだけ知りたい人はL2ノルムの項目をお読みください。
よく使われるノルム:L1ノルム・L2ノルム
それではL1ノルム・L2ノルムの二種類についてみていきます。ノルムの種類が明確に表記される時にはの右下に添え字がつけられます。
L1ノルム
L1ノルムはと表され、ベクトルの要素の絶対値の総和で計算されます。
式では次のように表されます。
具体例をみていきましょう。
例2)4次元ベクトルのL1ノルムを求めよ。
L1ノルムの値はL1距離もしくはマンハッタン距離と呼ばれます。この値を変化させるとL1ノルムでは以下のような頂点が軸上にある正方形の等高線が描かれます。
L2ノルム
L2ノルムはと表され、ベクトルの要素の、絶対値の自乗の総和の平方根で計算されます。添え字の無いもほとんどの場合、このL2ノルムを意味します。 式では次のように表されます。
この式は2次元の場合、ピタゴラスの定理(三平方の定理)と同等の式になります。 また、標準内積を用いると と表すこともできます。 具体例をみていきましょう。
例2)4次元ベクトルのL2ノルムを求めよ。
L2ノルムの値はL2距離もしくはユークリッド距離と呼ばれ、私たちが直感的に理解している2点間の直線距離を表します。この値を変化させるとL2ノルムでは以下のような原点中心の円形の等高線が描かれます。
L1・L2以外のノルム:Lp・L∞・L0
次にL1ノルム・L2ノルム以外のノルムについてみていきましょう。一般化されたノルムはを用いてLpノルムと表されます。また特有のLノルムとL0ノルムというものも存在します。
Lpノルム
上記でも述べたようにLpノルムは一般化されたノルムを表しています。はという制限がありますので注意してください。
Lpノルムの計算はベクトルの要素の、絶対値の乗の総和の乗根で計算されます。式では次のように表されます。
具体例をみていきましょう。
例2)4次元ベクトルのL100ノルムを求めよ。
例3)2次元ベクトルのL1.5ノルムを求めよ。
このようにが1以上の実数であればそれに対応するLpノルムは計算できるので無数の種類のLpノルムが存在します。
L∞ノルム
Lノルムは最大値ノルムや一様ノルムとも呼ばれ、と表されます。LノルムはLpノルムのをとした極限の値で、ベクトルの要素の絶対値の中での最大値を表します。式では次のように表されます。
具体例をみていきましょう。
例2)4次元ベクトルのLノルムを求めよ。
ノルムの値をを変化させるとLノルムでは以下のような各辺の中点が軸上にある正方形の等高線が描かれます。
pによる等高線の変化
またここでによって等高線がどのように変化するのかを整理しましょう。以下の図にそれぞれでとなる2次元ベクトルがどのような点にあるのかをしましました。 L1ノルムは頂点が軸上にある正方形で、L2ノルムは単位円になっています。L1.5ノルムはL1ノルムとL2ノルムの間で丸っぽい図形をしています。またLノルムは各辺の中点が軸上にある正方形になっており、L10ノルムはL2ノルムとLの間で角の丸まった正方形となっています。
つまりが大きくなるにつれて頂点が軸上にある正方形()→原点中心の円()→各辺の中点が軸上にある正方形()というように徐々に変化していきます。
L0ノルム
L0ノルムはと表され、ベクトルの要素のうちで0ではないものの個数を意味します。 式では次のように表されます。
上の式でのはの非ゼロの集合を表しており、式では)と書かれます。
具体例をみていきましょう。
例2)4次元ベクトルのL100ノルムを求めよ。
他のノルムに比べると0じゃないものを数えるだけなのでとても簡単ですね。しかしL0ノルムには一点注意しないといけないことがあります。 というのもL0ノルムは数学的なノルムの定義を満たしません。上のノルムの定義の条件①の斉次性について考えてみましょう。あるベクトルの非ゼロの個数とを0以外の実数倍したものの非ゼロの個数は同じになります。そのためL0ノルムでは斉次性が成立せず厳密にはノルムではありません。(条件②の正値性と条件③の三角不等式は成り立ちます。)
となる
またなので
よって となり斉次性が成り立たない。
このことからL0ノルムはノルムとは呼ばずL0擬ノルムや濃度と呼ばれるともあります。